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胸の鼓動の続き

本気の恋

シズクファーラムの意識は、夢 現の中を
彷徨っていた。

(此処は、どこだろう?)シズクは、
真っ暗な空間の中に一人立っていた。
見渡す限りの闇 何処を見渡しても他の人の姿は、見当たらずシズクは、段々と
不安になってきた。

(確か....ルークさんにアロマセラピーを
頼まれて....それから....どうしたんだっけ....)

シズクは、一生懸命考えるがそこから
どうしても思い出せない
真っ暗闇に取り残されてシズクは
悲しくなって来て涙が零れて来た
シズクは、心ぼそさを払う様に
ルークの名前を呼んでみた。
「ルークさん!!」
しかし返事は無い それからシズクは
離れてしまった他の大切な人達の名前も
呼んでみた。
「ミーナ ナイト ハイネ ハロルド局長
マリアさん」しかしやはり返事は無い
シズクは、嗚咽がこみ上げて来て今にも
泣きじゃくりたかった。

「うう~っ」目尻に涙が溜まって来た
シズクこのまま自分は、ずっと一人なの
だろうか....
「うう~っミーナ ナイト ハイネ...
うわああーん」シズクは、寂しくて
とうとう本格的に涙が出て来て止まらなくなってしまった。

ぐずぐずとシズクが泣いていると....
「シズク」と自分の名前を呼ぶ声が
聞こえた。
「ハイネ....」シズクには、その声が
ハイネの声に聞こえた。

「ハイネーーーっ.....」シズクにしては、
珍しく大きな涙声でハイネの名前を呼ぶ
「ハイネ....ハイネ....何処?」
「シズク」また声が聞こえた
シズクは、その声のする方へ全力で
走った。
「ハイネ.... ハイネ....」ハイネの名前を呼びながら懸命に走るシズク その時....
「きゃあ!」シズクは、誰かとぶつかり
転びそうになる。
しかしシズクはその誰かに腰を摑まれ
受け止められる。
「ハイネ....」シズクは、ハイネだと思い
顔を上げる。
しかしシズクを抱き留めたのは、ハイネでは無く....
「どうやら間に合ったみたいだね!」
シズクは、その姿を見て目を丸くする。
「お父さん....」
イクスファーラムは、シズクを見上げて
「うん久々に会ったけどやっぱりシズクは
可愛いね!僕はこんな可愛い娘を守れて
幸せだなあ...」
シズクは、イクスの顔を見て涙を浮かべる
「お父さん...お父さん....うっうっ ぐずっ... お父さん....ご....ごめんなさいっ...
私のせいで....お父さんとお母さんが....」
シズクは、今まで胸の奥にしまっていた
思いが出て来てしまいイクスに抱き付いて
泣き出した。

イクスは、そんなシズクを優しく抱きしめ
柔らかくシズクの髪を撫でる。
「嗚呼こんなに可愛いくなったシズクを
見られて僕は役得だなあ....
後でティアに怒られちゃうかもね!」

イクスは、にっこりと笑い自分の事を
キョトンと見上げるシズクの目尻に溜まった涙を指先で掬う様に拭う
「さぁ帰ろうシズク僕と手を繋いではぐれないようにね!」今のタマもといイクスは、
生前の姿になっていてちゃんとシズクと
手を繋げるのだ。
シズクは、「うん....」と頷きイクスの手を
取ろうとした時....
「シズク....」今度は、後ろの方から
シズクを呼ぶ声が聞こえた。
シズクが振り返るとそこに居たのは、....
「お母さん!!」シズクは、母親にも
会えて嬉しくなってティアにも駆け寄ろうとする。
しかしシズクのその行動をイクスが止める。
イクスに腕を取られ止められシズクは
イクスに振り返る。
「お父さん!お母さんだよ....!」
シズクは、イクスに笑顔を向けもう片方の
手でティアを示す。

しかしイクスは、真顔になりシズクに対して首を振る。
「....シズク....あれは、ティアじゃない....」「え?」シズクは、首を傾げる。

「シズク こっちに来て 私の所に来て」
ティアの姿をした者がシズクを呼ぶ
シズクは、ティアの方を振り返りながら
イクスを見る。
「お父さん....」イクスは、シズクに
にっこり笑って....
「大丈夫!僕の手を取ってシズク皆 君の
帰りを待ってるよ」
「皆?」シズクは、首を傾げる。
「シズクの大切な人達がシズクの帰りを
待ってるよだから行こう!」
シズクは、後ろに居るティアに後ろ髪を
引かれながらイクスの手を取り「うん」と
頷いた。

二人で真っ暗闇の中をひたすら歩く
シズクは、一人の時と違い隣にイクスが
居る事で心強くなっていた。

しかしシズクは、ふと思うイクスは、
いつまで自分の隣に居てくれるのだろうと
この空間から出てしまったらもう自分は
イクスにあえないんじゃないかもしかしたらこの空間を二人で歩き回れば本物のティアにも会えるのでは、ないか....ずっと二人と居られるんじゃないかそんな気持ちが
シズクの足を止めさせる。
「シズク....?」急に止まったシズクをイクスは、戸惑った様に見つめる。

シズクは、意を決してイクスに言う
「私、此処に居るそうしたらずっと
お父さんと居られるお母さんとだってきっと....」そんなシズクの言葉をイクスは、
遮る。
「シズク 君は此処にいちゃいけない
気持ちは、とても嬉しいけど君は、
帰らないといけない....
それに君には、もう僕達より会いたい人が
特別な人が居るんじゃないのかい?」

(特別な人?....) そんな人私には居ない
皆の事は、大好きだ だけど特別に一番に
思う人なんて私には居ない....
そう思いシズクは、静かにイクスに首を
振る。
そんなシズクを見てイクスは、苦笑した。
「本当にそうかい?よく考えてごらん
シズク 君は、自分の気持ちに気付いて
いないだけだ.... 心の奥に蓋をして
自分の気持ちを考えない様にしてるだけだ
シズク.... 君は、もう僕達に囚われないで
我慢しないで自分の幸せを考えて良いんだよ!」
シズクは、混乱していた。イクスの言っている意味が分からなかった。
シズクは、「我慢してないよ....」と正直に
自分の気持ちをイクスに告げたつもりだった。
しかしイクスは、それを見抜いた様に
最後にシズクにヒントを与える様に
シズクにこう投げ掛けた。

「さっき僕が君の名前を呼んだら君は、
誰かと間違えたよね 本当は、一番に
助けに来て欲しかった人が居るんじゃないのかい?」

イクスのその言葉にシズクの目尻からまた
ぶわっと涙が溢れた。

そうしてシズクは、イクスに自分の特別な
一番大好きな人の名前を告げる。

「ハイネに....会いた....い....」涙混じりに
シズクは、イクスにそう訴えたのだった。

イクスは、シズクに手を広げこう言った
「可愛い娘のその願いお父さんが絶対に
叶えてあげよう!」

こうしてシズクとイクスは手を繋ぎ
また真っ暗闇の中を歩き出した。

シズクの奥底で、眠っていた恋心が
今 やっと目を覚ましたのだった。


9/12/2024, 11:35:32 AM