もんぷ

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雲り

 部屋を片付けていると小学校の頃の夏休みの絵日記が出てきた。よくこんなの残っていたなと開けてみると幼い頃の自分の汚い字と独特の絵。長野のおじいちゃんの家に行ったこと、花火を見たこと、プールに行ったこと。全てうっすらと覚えているようであんまり覚えていない記憶にページを進める手が止まらない。途中、力尽きたのか絵も明らかにやる気のない棒人間で、ほとんど寝てましたなんて書いてある日があった。自分らしいなと鼻で笑いながら先生のコメントの欄を見る。一つ一つに当たり障りのない「良かったですね」や「次は頑張りましょう」とか書いてあったが、これにはどう反応するか。

「雲りではなく曇りです」

 見ると天気の欄には自分の汚い字で「雲り」の文字。ツッコむところがそこしかなかったのだろう。先生も大変だ、なんて思っていたらふとこの絵日記が返ってきた時の記憶が思い出された。得意げに書いた雲の漢字。みんながひらがなで書いているくもりを漢字で書ける自分がかっこいいと思っていたが、達筆な先生の字で書かれた「曇り」の文字は自分が想像していた「くもり」や「雲り」よりもおどおどしい雰囲気が感じられて怖かった。そこで初めて自分の小ささを知った。

3/23/2025, 1:59:02 PM