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残り時間(テーマ 沈む夕日)

 朝起きて、仕事のことを考えて胃が痛くなる。

 片付かない仕事。

 もう若くなく、体も、段々と無理がきかなくなっている。

 毎年求められるものは増え、体はボロボロになっていく。

 得られたものは何だろう。

 と最近考える。

 結婚もせず、子もいない。

 両親は老い、自分も老い。

 白髪は、数えるのが無意味なくらいにはある。


 万能感と、有り余る時間と、世の中の不条理への不満に満ちていた学生時代。 

 『あの時ああしていれば、全く違う人生があった』

 それは単なる空想だが、確度の高い予想で。

 あそこで仲違いしなければ、あそこでキチンと勉強していれば、あそこで我慢せず、自分の思うがままに生きていれば・・・。

 思ったところで、時間に戻らない。

 沈む夕日を扇で戻す、などという芸当はできないのだ。

 できることは、ただ残りの時間を大切に過ごすことだけだ。


 そのまま沈むか、沈む際にひときわ明るく輝くか、は選ぶことができる。

 まだ沈んでいないから、まだ選べる。

 沈みきったら、『日が出ているうちにやっておけばよかった』と後悔することすらできないから。

 ほら。

 もう、恥ずかしがって何もできないほど幼くもないでしょう?

 手に入らなくなったものをうらやましがるより、まだ手には入るかもしれないものに尽力する方が、人生はきっと楽しいから。

 沈む夕日は、まだ沈んでいない。


 

4/8/2024, 4:32:51 AM