喜村

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--心があるのは動物だけだと思ってる?
動かない体で私は毎日毎日なんとなく過ごしていた。
 そんなある日、晴れて綺麗な空気の中、朝日に照らされて本堂の中、君をみた。
 何か思い悩んでいる君は、ここ最近、毎日のように私の元へと来る。
 きちんと礼儀正しいお参りの仕方をして、それなりの金額を入れて帰って行くその後ろ姿はいつも不安そうで。

 君の願い、叶えてやろう。
 君の心を読み解いた。

 神仏の心で君の心に寄り添う。
そうか、子どもが受験なのだね。親心子知らず、という感じだ。
 子どもも一生懸命勉強して親を喜ばそうとしてるし、親もこんなに毎日参っている。
 きっと、大丈夫だろう。
 
 受験が終わり、結果がでたのだろうか、君は久々にお参りに来てくれた。
《お陰さまで合格しました、ありがとうございます》
 私の心も通じたようだ。お礼参りにきてくれたのだろう。
 澄んだ空気の中、軽やかな足取りで君は踵を返し、家路へとついた。
【心と心】

12/12/2022, 1:54:43 PM