羅針盤
土壌汚染の進んだ地表を離れ、人は空へと登って行った。その頃、空では浮遊するいくつかの島が発見され、人は空の島で暮らし始める。しかし、人は住める場所を貪欲に求め、空の旅を繰り返す。
空の島の中には、誰も行ったことのない未開の島があり、お宝が眠っていると噂れていた。
俺もお宝欲しさに新しい島を探そうとやって来た1人だ。
新しい島を探すためには空の道標となる羅針盤が必要だ。空の島は浮遊し、絶えず動いているため島を追うには指標がなければたどり着くことはできない。
羅針盤には赤い羅針盤、黄色い羅針盤、青い羅針盤の3種類がある。
赤い羅針盤は、簡単に手に入るが粗悪な品が多く、足止めをくらったり、別の場所に連れて行かれたり、同じところをグルグルしたりと、とにかく酷い。
黄色い羅針盤は、赤よりはいいが危険な場所や航路を通ることが多く注意が必要となる。
青い羅針盤は高価で数が世界で100個と決められている。品質は良く確実に目的地に連れて行ってもらえるが、数が少ない分手に入れるのが難しい品だ。
まずは、羅針盤を手に入れるため空の船乗りたちが集まる空の港、ポートアースに向かう。そこで、青い羅針盤を持っている奴を探し出して横取りする。それが今回の作戦だ。
どうやって青い羅針盤を持っている奴を探すのか。港で待つていれば、それぞれの羅針盤を持った船が港に集まる。そして、出港する時に羅針盤を高く掲げ航路を決める。青い羅針盤を掲げた奴が俺のターゲットだ。
どうやって横取りするか。これも簡単。
その船の近くの木にロープを縛る。青い羅針盤が掲げられたら、ロープを掴み、羅針盤目掛けてターザンのように飛ぶ。そして、青い羅針盤を掠め取ってくる。な。簡単だろ。
調度大きな船が入って来た。キャプテンらしき男が船首へ向かってあ歩き出し、船員もその後ろに続く。キャプテンの手には青い羅針盤。ラッキー。俺はついてるぜ。
木に登りチャンスを待つ。
キャプテンが青い羅針盤を高く掲げた。
今がチャンスだ。
木を蹴って、ロープを掴み飛びだせば、体が風に押されて加速する。手を伸ばせば掴めるところまで来た時、俺の手を誰が掴んだ。
「俺様から盗もうなんていい度胸してるじやぁねいか。なあ、野郎ども。俺様を知らねえとは言わせないよ。」
え、捕まった。こいつ、天下の大海賊。キャプテンイブールだ。
「離せよ。離せよ。」
足も手もバタつかせ逃走を試みるが掴まれた手を外すことはできなかった。
「おい、小僧。宝が欲しいか。武器もなしに俺様から盗みをしようとする心意気、気にいったぜ。お前の目は海賊の目をしているしな。俺様の船に乗れ、青い羅針盤の示す新しい空の島まで連れてやる。その変わり、下働きだ。」
新しい島へ行ける。
「本当か。新しい島へ連れてくれるのか。行く。もちろん行くさ。下働きでもなんでもやる。キャプテンイブール。男に二言はないよな。」
新しい島でキャプテンイブールからお宝を横取りしてやる。今度こそ必ず。
1/21/2025, 11:14:26 AM