「たまには」
たまにはゲームをしてみようと埃を被ったコントローラーに手を伸ばした。
社会人になってから1日のたった1/3を占める仕事に疲弊させられ何かをじっくりと味わうことがなくなっていた。灰色の毎日、少しは変化をつけたいと思うのに脳が休息したがってその変化を思いつくのさえ拒否をする。終いには見たくもない動画を永遠に見て、仕事以外何も記憶に残らない日として眠りにつく。
このまま感情を殺したまま歳をとるのは嫌だ。若い頃のように寝る間を惜しんでやっていたゲームでなんとか新鮮さを取り戻したい。
ゲームを起動すると見覚えの無いソフトが出てきた。もう全く覚えていないがおそらく就職直前に発売されたゲームだ。
やろうやろうと思いながらそのまま仕事の渦に呑まれて忘れてしまっていた。
ほのぼの系だろうか?20年ほど前のインディーズゲームみたいにシンプルで手書きのタイトル画面。いまどき珍しいがその素人らしさが胸を高鳴らせた。
クラシック音楽のような壮大な音楽とともに画面が切り替わった。
「このゲームはセーブができるまで膨大な時間を要します」真っ黒な画面に文章とYesとNoの選択肢が出てきた。
最近のゲームはプレイヤーに配慮してクリアするまでにどれくらい時間がかかるか教えてくれるらしい。
時計を見上げると短針は10を指していた。
しばらく逡巡したのち、俺はコントローラー元の位置に戻した。
3/6/2026, 10:16:58 AM