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これはどうにもできない、投げ出してしまいたいようなスッキリできない気持ち。
その日目の前の貴方は笑って言った。

-ごめんね。でもいつまでたってもこの気持ちは変わらない。大好きだよ!-

約束したわけじゃない。心にも無く書類で結ばれたわけでもない。

ただ貴方を愛した。見返りは無いけれど、貴方の望む物、好きな物、全て手に入れてお金と引き換えの愛を手に入れようとした。
いつも、

-貰ってばかりで申し訳無い-

なんて言うけど、ホワイトデーにはたっぷりのご褒美をくれる。時々くれる手紙には、感謝と愛と優しさを詰めてくれて、そんな貴方を愛してしまった。

運命の日。私は貴方の目の前で話を聞いていた。紡がれていく言葉には、今の幸せな気持ち。笑顔で、突然ごめんね、なんて言う貴方に迷いの色はなくて、聞けば聞くほど涙が溢れてきた、素直に祝う人、おめでとうって言いつつ涙が隠せていない人。

様々な人がいる中で私はただ1人、くしゃくしゃになった感情を拾い集めながら、貴方を見つけた日の事や、共に一喜一憂した日々を思い出す。

私の涙は綺麗なのか嫉妬に汚れているのか、隣にいる人の顔も見えなくて、どんどんぼやけていく視界の中で、大声で叫んだ。

「結婚おめでとう!これからも応援するよ!」

-きっとアイドルの貴方はいつまでたっても変わらないと思うから-

嬉しそうにはにかむ彼に、私は弾けるようにしゃがみ込んだ。

10/10/2022, 4:00:25 PM