わをん

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『明日、もし晴れたら』

明日の夏祭りのために仕立ててもらった浴衣を見ながら、明日の天気予報を映すテレビをじっと見ている。明日の予報は曇り時々雨。このところの暑さが和らぐのは助かるけれど、夜店に行く頃には星が見えるほどには晴れてほしい。
夏休みに入る前にクラスの間で噂になっているおまじないを耳にした。その内容は夏祭りの開催される神社で星空の下で告白すると結ばれるとかなんとか。普段なら茶化す側だけれど、私には好きな男子がいたのでふうんと興味ないふりだけしておいた。
そして今の私はスマートフォンを手にしてメッセージを送る寸前でもだもだと迷っている。文面はもう打ち込んであるのであとは人差し指で紙飛行機のアイコンをタップするだけ。
“明日、もし晴れたら夏祭りに行かない?”
その一動作を断られたらどうしようとか、明日晴れなかったらどうしようとか、いろんな不安が降り積もって行動に移せない。天気予報は終わってニュース番組が始まる。ごはんよ、と声が聞こえて晩ごはんの時間になる。スマートフォンを見つめて返信を待つ時間から逃れるためにえいやと紙飛行機を飛ばした私は、そこから逃げるように晩ごはんの準備を手伝った。
“晴れてなくても行こう”
ロック画面に映った返信を見て私が心の中でガッツポーズをとるのはもう少しあとの話。

8/2/2024, 1:09:12 AM