cloudy
「これは、勿忘草…?どうしてこんな時期に…」
曇り空の日に起きたその失踪事件は、違和感があった。
今は10月、春じゃないのにその部屋の床は勿忘草の花で満たされていたのだ。鑑識係も大変だろうに。
「花屋でこんなに扱っているわけないのに、ここまで用意できるのかね?」
机には、1枚の紙が残されていた。
___ Meril・Myosotis
「先輩、これなんですかね?何かの呪い?人名?」
軽そうに言うが、声に恐怖が隠せていない。
かくいう私もだが。
鍵のかかった部屋、閉まっている窓、床一面の勿忘草、残された財布にスマートフォン…
「彼女は…どこへ?」
大家の男性も呟く。
「昨日の朝挨拶した時には、彼女特に変わった様子はなかったんですけれどね…」
血の痕跡も見当たらない、指紋もない。
この事件、何かがおかしい。
不可解さに頭を抱える私の後ろで、えぇっ!と叫ぶ後輩。
「先輩…!紙に新しい文字が…」
「はあ?文字だと⁉︎」
大家と後輩と3人で紙を覗くと、羽ペンで描かれたような文字が浮かび上がっていた。
___ 愛と狂気は、表裏一体である
やはりこの事件、普通ではない。
普通の事件などないが。
9/23/2025, 2:22:49 AM