星乃威月

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大都会
人の行き来が引っ切り無しで、車や人の騒音が絶え間ない
車のクラクション、エンジン音、人々の話し声に、笑い声──
どこもかしこも音だらけ
都会は、終わりのない巨大なオーケストラを奏でているようだ

先を急ぐ人ばかりで、他人なんか気にもしない
そんな雰囲気を醸し出すこの地で、まさか、こんなことになるなんて……


燦々と照り付く真夏の日差しに熱せられ、コンクリートが焼け付くアスファルト
車が行き交う熱風に、咳き込みそうになりながら、今日を歩く

汗が滴り落ち、喉がカラカラ
今にも死にそうな勢いだ


自販機は、どこだ?
コンビニは、まだか?


頭も湯だるあまりの暑さに、意識朦朧とする中
俺は、飲み水を求めて、さ迷い歩いた

意識がぼんやりして、朦朧とする
目の前が、クラクラ眩む……


だ、誰か……
誰か、助けてくれ……
俺はまだ、死にたくない……


心の中で、何度泣き叫んだ事だろう……
声にもならないうめき声では、周りの音で掻き消されるばかり
誰一人、振り向くはずもなかった

◇─◇─◇

……ここは……どこなんだ……?


気付けば、涼しい風が肌を掠める
清々しい空気が、身体中を巡る感覚に襲われていた

火照った身体が、徐々に冷えてゆく
まるで、涼しいプールに浸かってるかのよう……
徐々に呼吸も整ってゆき、体が楽になっていった


「……ブデスカ……丈夫デスカ……大丈夫ですかー?」


誰かに呼び止められてる声がする
ポンポンと、肩を叩かれてる感覚も……


「こ、ここは……」


目を覚ますと、見慣れない灰色の天井
沢山のコードが、体中を張り巡らしていた
心電図のような音が、耳元で絶え間なく響く


「気付かれましたか
 貴方は、道端で、気を失ってたのですよ?」


見上げると、救急隊員らしき人の姿
懸命に、口元の酸素マスクを支えてくれていた


そっか……気を失って、倒れていたのか……
声を上げる事もできなかったこの俺を、助けてくれた人たちには、本当に感謝する
嬉しい限りだ
もしかしたら、今頃、俺は、生死をさ迷っていたかも知れないからな……
けど、誰が知らせてくれたんだ……?



「もしもしっ!ひ、人がっ!人が、倒れたんですっ!
 き、救急車っ!救急車を、お願いします!」


話を聞けば、とある心優しい女性の声で、通報が入ったという
女性はたまたま、交差点の向こう側で、青信号になるのを待っていた
そこを、目の前で倒れ込む男の姿をたまたま見かけ、通報したという



「一命は取り留めました
 もう大丈夫です
 念のため、病院で検査を受けましょうね」


優しく問い掛ける救急隊員

◇─◇─◇

一連の話を聞き終わり、感謝の気持ちで、涙が溢れ出た


もし、どこかで、何かが欠けてたら……
俺は、とっくに死んでいた事だろう


通報してくれた通行人の発見も、救急車の早急な処置も……
何より、周りに人がいなければ、俺は、どうなっていた事か……
想像しただけで、恐ろしさが込み上げた


もっと、人に感謝しながら、今を生きよう
今後の俺のためにも、周りの皆のためにも……


そう心に決めた




ーオアシスー

7/27/2025, 3:07:04 PM