小絲さなこ

Open App


「嗅ぎたい彼氏」



別々の高校に進学したから、家が隣同士でも偶然に会うのは難しい。
久しぶりのデートを楽しみにしていたのに、台風の影響で今日は一日中雨。
仕方ないのでおうちデートで映画鑑賞に予定を変更。

部屋に入るなり、彼は抱きついたまま私の首筋に鼻を寄せた。

「なんか、つけてる……」

がばりと音がしそうなくらい、勢いよく私から離れ、若干不機嫌そうに眉を顰める彼。

「あ、うん。友達がくれたの、香水」
「……ふーん」
「嫌?」
「うん」
「……そう」
まぁ、香水が苦手な人も少なくないし。仕方ないか。
「デートの時に使って」と言われたけど、苦手な人の前では使えないよね。

「いや、香水自体が苦手なわけじゃ……ないんだ」
「そうなの?」
「んー、なんつーか、そんなもんつけなくてもいい匂いするのに、なんでわざわざ香水つけんのかなーって……」
「な、なにを……」
「久しぶりだし、ちゃんとお前の匂い嗅ぎたいんだってば」
再び抱きついた彼は、首筋に噛み付くように顔を近づけて鼻を鳴らす。
犬?犬なの?

「あー、それもいいな。お前の犬なら喜んでなるよ」
「ばっ……誤解を招くようなこと言わないで!」


────香水

8/30/2024, 3:11:09 PM