恋か、愛か、それとも
恋か、愛か、それともただの友情か。とにかく仲は良いと自負している。サークルに来たら当たり前のように私の隣の席を陣取る彼。整った顔立ちをしているその人は、大人しい性格であまり輪の中心に入ってこないのに反して、いつもどこか個性的で少し派手な服装をしている。私が絡んでいくとめんどくさそうにしているのに、他の人と話していると面白くなさそうな顔をして端に収まっているのがかわいかったのだ。私だって最初はただの友達だと思っていたのに、ただの友達として扱われているにしては特別な対応が多いことに気づいてしまったのだ。無意味なLINEは嫌いだと言っていたのに私の他愛もないメッセージにいちいち反応してくれる彼にある種の希望を持っていた。そんな中、迎えた私の誕生日。彼からのプレゼントは花束だった。
「花束なんてもらったことないんだけど」なんて笑いながらも綺麗なその重みを噛み締めた。プレゼントに花束なんて、これはもう本命ではないか、両思いなんじゃないかなんて勇気を出そうとした時だった。
「あれ、またあの花屋行ったの?好きだね〜。愛しのあの子には会えたの?」
「…別に、違うし!」
彼はからかっている同級生の言葉を聞いて、整った顔立ちを真っ赤に染めていた。何それ。話を聞くと、彼は前に行った花屋の店員に一目惚れをして通い詰めているらしい。え、何それ。私とはもう1年以上の付き合いなのに、ここ1ヶ月ぐらいで出会った人に負けたんだ。あー、一目惚れって…しかも私の誕生日を思った花束じゃなくて、その子に会うための花束だったなんて…はは、うける。だるーい。乾いた笑いは真っ赤な彼の耳には届かなかったようだ。
家に帰って綺麗な花束を机の上に置く。行き場のない怒りを花にぶつけるほど私は出来損ないではない。でもドライフラワーにしてずっと飾っておくには心の余裕が足りない。彼が花屋に行くことになったきっかけは3月のサークルの先輩の卒業式。花束の用意は1年に任されたから適当にじゃんけんで決めて彼が行くことになった。負け残っていたのは私と彼の2人。最後に私がチョキを出していたら買いに行くのは私の役目だった。ああ、なんで。私が負けていたら、こんなことにはならなかったのに。もっと上手くことが運んで、花束はもらわなくとももっと欲しかったものをくれる関係性になっていたかもしれないのに。花から目を背けるようにカラコンを外して乾いた目を労った。
6/5/2025, 9:40:12 AM