私のお気に入りは、遠出したときに泊まるホテルの、ゆっくりできる朝。
ゆっくり起きて、大きな鏡を覗き込むと、そこには頬に変な枕のあとがついた私がいる。
「どうやったら治るんだろう、これ」
私のお気に入りは、バスでぼんやりぼんやりする時間。
そそくさと一番うしろの左隅っこの席に座って、あくびをかみ殺しているのを誰かに悟られないように。
「悟られるってなに?誰に?ふふ、バカみたい!」
私のお気に入りは、おじいちゃんとおばあちゃんの大きな家。
おじいちゃんとおばあちゃんはもう年をとって、その負担にならないようにと、泊まることはなくなってしまったけど。
枕元で絵本を読んでもらったこと、庭で一緒に干し柿につく虫を追い払ったこと、こっそり食べさせて貰ったみかんの味。
「おじいちゃん、おばあちゃん、久しぶり。」
どれもこれも、私の大好きな、大好きで大好きで、いつかはなくなってしまうかもしれない、私のお気に入りたちだ。
2/17/2024, 11:06:59 AM