不在を証明するのは難しいと言うが、狭い空間においてはその限りではない。例えばそう、このカバンの中だ。今朝、確かに仕舞ったはずの鍵だが、どうもその行方が掴めない。一つ横のポケットに入ったのかと探りを入れてみるがここにもない。その隣にもない。そのさらに隣も同様である。どういうことだろう。私の手が、あの硬い感触を求めて忙しなく動き回る。障害物が邪魔で片っ端から取り払う。財布、タオル、ティッシュ、などなど。これでは四次元ポケットを漁るドラえもんじゃないか。私はすっかり青ざめ、やがて一つの結論に辿り着く。それは、鍵はどこかにあるということだ。ここではないどこかに。
6/27/2023, 2:01:54 PM