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いい加減、自慢話にうんざりしていた。

りんご畑で私たちは簡易的な机に向かい合って座っていた。
机には食べやすいサイズにカットされたりんご。

「そんなに言うなら食べなきゃいいじゃん」
つい語気を強めてそう言ってしまった。

彼女の困惑した顔が空気を揺らした。

私は立ち上がると、彼女に背を向けりんごの木へ向かった。
激しい後悔に苛まれていた。

彼女は取り繕うように私の後を追ってきた。
そこには私が初めて見る、彼女の末っ子らしさがあった。いつもの自信に満ちた彼女とは違うその様子に、私は自分の罪と向き合わねばならなかった。

横に並んで歩きながら、言葉を探した。その間にりんご畑は途切れ、変わりに赤や青の明るいネオンで照らされた繁華街に差し掛かった。

いやそんなはずはない。私たちはりんごの食べ放題に行ったのだから、その時間内はずっとりんご畑にいたはずだし、第一、りんご畑と繁華街は電車で数十分はかかる。ふたつの記憶が連続するはずがない。

私はりんごにナイフを当てするすると剥きながら、そんなことを思い出していた。

横に置いたスマホには1つの通知もこない。
暗いままの画面には私の手元を見つめる彼女の姿が映っていた。

(テーマ:楽園)

4/30/2024, 11:10:41 PM