酸素
スーパーでの買い物帰りの駐車場で、ツバメを見た。ツバメの形はわかっている。だから、あれは間違いなくツバメである。
ツバメのシルエット柄のカーテンを長いこと使っている。毎日開け閉めするたび目に入るのである。実物の形がカーテンの柄にそっくりなことに、深くうなづく。違うところも見つけた。実物のほうがカーテンの柄よりも小ぶりである。
で、それが数羽、青い空を背景に飛びかっている。
駐車場は広く障害物もないので、ぶつかる心配がないのか、思ったよりも低いところを滑空している。
手を伸ばしたら手にぶつかって、落ちるのではないかと思えた。そんなことはしないけれど。それに実際そこまで低く飛んではいない。
しばらく見ていたら、ツバメは高いところから、すいっと急降下する動きを見せた。地面すれすれまで迫っていく。すれすれを飛んでいる。
おおお?
墜落すると見せかけて墜落しないのだ。ちょっと面白い。
だけど、もっと面白いのは――。
失敗して本当に墜落することだ。
ああそうだ。部屋のカーテンを変えようと突如思いつく。あれは色あせている。くたびれていて見飽きてる。そうしよう、それがいい。
私は車に乗るとエンジンをかけ――、
……え?酸素?そうだった。酸素系漂白剤を買いにきたのを忘れていた。私はスーパーに隣接するドラッグストアへと歩いていった。
5/14/2025, 12:24:52 PM