『青い青い』
仕事の多忙さに溺れて、電車の中でウトウトしていた。何とか手に入れた座席。それをありがたく享受して、今にも眠りにつこうとした。
「今日は楽しかったね」
「ねー!ありがとう付き合ってくれて」
「いいんだよ、こっちこそありがと」
聞こえた会話に、不覚にも耳を澄ませた。まだ幼い男女の声だった。恐らく高校生か大学生あたりだろう。
「そーいえばだけど、好きな子とは進展あった?」
「何もないよ。俺を慰めてくれてもいいよ」
「えへへ、かわいそう」
「煽るんじゃない」
「だってねえ」
「はあ、もう諦めようかな〜」
「…諦めちゃうの?」
「うん」
女の子の声が幾分か弾んだのがわかった。それで、私はこの2人が生きている世界の青さを知った。彼らの世界は青い、本当に青い。私は、きっとこれから夢の中で彼らの青い世界のその先を見るんじゃないかと思った。
5/3/2025, 12:52:24 PM