水月凜大(みなつきりお)

Open App

『通り雨』


中学生の頃、ある日の
友達と歩いた部活からの帰り道

曇天だった。


けれど、ふと空を見上げると、衝撃的だった。

まるで世界が真っ二つに分断されたかのように

太陽がキラキラ輝く空と、
今にも雨が降り出しそうで、
威圧し、脅してくるような灰色の空が、
見えない境界線を隔てて、同じ空に広がっていた。

友達と、
「なにこれ〜!」「なんて、ロマンチックなんだ〜」
と、大いに盛り上がっていた。


そのとき、太陽が眩しく輝く光の中で、
より一層、キラキラと輝く雫が降りてきた。

ほんの僅かな、傘を必要としないほどの
通り雨だった。


真っ二つに割れた世界の下で
輝く光に照らされて、
やさしい通り雨を浴びながら
テンション高く、友達と2人で歩いた。

私たちは、吹奏楽部で
ちょうど、その時に取り組んでいた
コンクールの自由曲が、
今まさに、自分たちが見ている天気と景色の
イメージにぴったり合うねと、
興奮しながら話していた。


あれから、20年程経った今でも、
似たような通り雨に出会うと
この時のことを、鮮明に思い出す。


青春時代の、私の心に映った、
ロマンチックで、劇的な通り雨は、
まるで記憶の引き出しのようなもので

引き出しを開けると、

吹奏楽や音楽に注いだ情熱や、
友達との他愛もない会話から伝わってくる
温かい心の交わり、
何か一つのことに直向きになるという感覚、
そして、音楽や自然に触れた時の感動など、
今では、ほとんどなかなか味わうことができない、
懐かしくて、切なくて、あたたかくて、
そっと励ましてくれるような、
そんな不思議な何かが、胸にあふれてきて

過去の自分から今の自分までを、全力で肯定して、
その先の未来の自分まで、大丈夫!って
背中を力強く押してくれている。


あの時の、劇的な通り雨に、負けないくらい
今の私に、劇的に力をくれている
わたしの、通り雨の思い出なのでした。


9/27/2022, 6:43:44 PM