ミキミヤ

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15のとき、10歳年上の姉に赤ちゃんが生まれた。
暖かな日が差す春の始まりに生まれたその子は、ヒナタと名づけられた。

わたしは、その年のお盆、姉家族が帰省してきたとき、ヒナタと初めて対面した。
姉に抱っこされて車から降りてきたヒナタをおっかなびっくり覗き込んだら、黒目がちな瞳にじーっと見つめられた。わたしはどうしたらいいのかわからなくて、手を振って、とりあえず挨拶をしてみる。

「はじめまして、ヒナタちゃん。きみのお母さんの妹のエミです。よろしくね」

ただ見つめ返されるだけで、反応はなかった。

「ふふ。ふたりとも緊張してておもしろい」

姉が微笑む。
わたしは確かに緊張していた。だって、こんなに小さい子と関わったことなんてないのだもの。
わたしは振ってた手を引っ込めて、ヒナタから離れた。


そんな緊張の初対面を終えたわたしは、それ以降、四六時中、ヒナタが気になって、何かと構いに行った。
次第にきちんと反応してくれるようになって、一緒に遊べるようにもなった。わたしに慣れてきてくれたのかと思うと嬉しかった。

わたしもヒナタもお互いに慣れてきた頃。

「抱っこしてみる?」

姉が言ってくれた。実はずっと抱っこしてみたかったわたしは、うんうん頷いた。姉にやり方をきく。

そうしてわたしは初めて、ヒナタを抱っこした。
思ったより重い。それに、あったかい。胸にじーんとくるものがあった。

「ヒナタ、」

呼びかけてみる。ヒナタは笑って、手足を動かした。
細められた目に、やわらかな光がキラキラ輝いている。
『子宝』なんて言葉があるけれど、確かにこれは宝物だと思った。


この光が、どうかずっと失われませんように。
ヒナタを胸に抱きながら、わたしは祈った。

10/16/2024, 11:45:11 AM