syudoさん『邪魔』オマージュ
今更何も言わないけれど、お前の態度が気に食わぬ。
なんて、心の中の燻り。
気配り上手だし聞き上手。
「誰にも言わないでね?」なんて他言無用もお手の物。
おまけに突飛な輩にも擬態処理。いくら癖の強いやつも絆されていく…醜いアタシの嫉妬。
「███ちゃんは可愛いよね!」
「一緒にいて楽しい!」
誰彼皆々お前らの味方になるけれど、それでもアタシは許さない。認めない。
昔からヒロインが嫌いだった。皆悲劇のヒロイン。
虐められて悲しいの何の。読者の同情を買おうと涙をほろりほろり。
だけど、アタシは靡かない。客観的に見ても何を見せられているのだろうと呆れるの。
まあ最終的には王子様と結ばれて幸せに暮らすオチ。
ホント、くだらない。
別にアタシが善とは思わないが、お前が善など反吐が出る。
アンタの心は道徳心の塊。心が道徳の教科書なんじゃないの?
いじめは許さない、親切に見返りを求めるな、親を大切にしろ、命の尊さを知れ…
ウザったらしい。
だけど、アンタの周りの奴らの目は明らか。
自問自答で夜は暮れる。
そう、アンタは善なの。アタシは認めないけれど。
理屈や倫理や常套句、二股論拠さえ…アタシの前では通じない。聞こえない。
耳を塞ぎたくなるほどの正論は、アタシにとっては迷信なの。
そうやってずっと殻にこもる。
意味を殺してしまえよ!
好きに狂ってしまえよ!
…なーんて、出来たら良かったのになあ。
昔の記憶。アンタとアタシのはじまり。
アンタはいつも主人公で、アタシはいつも悪役だった。
アンタをいじめられる優越感に浸れても、最終的にアタシは壇上から降りるの。
いっつもアタシは悪役だったの。
でも本当は、王子様に愛されたかった。
エンドロールの1番上に、主人公として乗りたかった。
最後まで舞台に立っていたかった。
…うふふ、あはは!!!
現役女優であるアタシとアンタ。
学校の中では人気者でもSNSでは違うんだ。
エゴサーチしていると簡単に見つかるアンタの悪口。
そうそう、御託に酔っておられますが…
さしずめアンタも個人主義。
敵なく生きてくことなんざ、
所詮オメーにゃ無理なのさ。
カンカンと頭に鳴り響く。
人目避けて笑っていこうぜ!
他者の目なんて気にせず好きに狂っていこうぜ!
死ななきゃ何も問題ないのさ!
嫉妬で駆けて行こうぜ!
嫉妬塗れで何が悪いの?全部アタシの自由よ!!
「ララララララララララ」
ミュージカルで歌ったことなんてなかった。
「ララララララララララ」
いつだってハモリ役だった。
「ララララララララララ」
でも今だけは…
「ララララララララララ」
アタシを主役にさせて。
──────ララララララララララ
子供の鼻歌のような声だけが、路地裏にこだました。
3/7/2025, 11:12:02 AM