いぐあな

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300字小説

未来の為に

 父王の命で隣国を攻めたとき、俺は嫁いだ妹の首と引き換えに、彼女が産んだ帝国の未来を滅ぼすという予言の子を見逃した。
『いつか、母の仇を取りに来るといい』

 その後、父が崩御した後を兄が継ぎ、圧政はより厳しいものになった。
 そして今、反発した民衆と元隣国の王の率いる軍勢が王城を囲んでいる。
 王座で怒鳴り散らす兄を尻目に単騎で軍勢に突っ込む。案の定、囲まれた俺の前に若い王が現れた。
「貴方が私を逃してくれたと乳母に聞いてます。……降伏してくれませんか?」
「俺はお前の母を殺した男だ。この首を取り、更に気勢をあげて王城に攻め込め」
 この大陸の未来に平和と安寧を。俺の頼みに王が剣を抜く。俺は笑んで手の武器を下げた。

お題「未来」

6/17/2024, 11:48:35 AM