『安らかな瞳』
バタバタ、と長くすんなりした足でもがいていたロルフ。
茶色い毛並みの美しいロルフは、しばらくしてもがくのを止め、僕をまっくろな瞳でジッと見てきた。
まっくろなのに、透き通るような瞳。
闇を湛えるのではなく、ひたすら純粋で、僕をそのまま写す鏡。
くろく長いまつ毛がパサパサと動き、ゆっくりとした瞬きは、野原を駆けている訳でもないのに生命力に溢れていた。
ロルフ、僕の3歳の誕生日にやってきたロルフ。
「まだ仔馬だが、既にとても賢い瞳をしている」と父が嬉しそうに買ってきたロルフ。
ああ、君は僕と一緒に育ってきたのに、僕を先に置いていってしまうんだね。
そんなに安らかな瞳を僕に残したまま。
3/15/2026, 5:20:32 AM