川瀬りん

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『君からのLINE』
(※ホラー要素注意)


[トイレの電気点けっぱなし]

ある日突然、そんなメッセージがLINEで届いた。
思わず、えっと声を出し固まってしまった。
普段なら気味が悪いから速攻ブロックするが、トイレの電気が本当に点けっぱなしになっていたから無視が出来なったのだ。
だって家の状況を知っているなんて逃げ場がないじゃない。

[誰ですか?]

そう文字を打って送信するとすぐに既読がついて、数秒後に返事が来た。

[俺は翔。そうだな、信じられないだろうけどこの家に住む幽霊かな]

何を言っているんだ?
ますます気持ち悪い答えに私は眉間にシワを寄せてしまう。

[通報します]
[いやいや待って!聞いて!]

何を聞けというのだろうか。

[今まで色々おかしなことあったでしょ?それ俺の仕業なんだよ。色々気づいてほしくてやってたけど、君は気付かないから頑張って言葉を伝えるスキルを身に着けたんだ]

そんな訳わからない事言われて納得できるわけがない。
どう返すべきか悩んでいると再度メッセージが来る。

[音とか出してたし物とかも移動してたでしょ?君は怖いと言って友達に電話とかしてたみたいだけど、ごめん俺なんだ。俺は昔ここに住んでて、死んじゃったんだけどここから離れられなくて。でも悪いことはしないから!今回もほら!トイレの電気教えられたから電気代勿体ないってならなかったでしょ?]

確かにポルターガイスト現象的なものはこの部屋で起こっていた。
事故物件とも聞いてなかったし、どうしたものかと悩んでいた矢先だ。

[でも貴方は男でしょ?嫌なんですけど]
[それは、ごめん。でも覗きとかはしないから!]
[どうだか]
[お願いだから通報しないで。こうしてメッセージを送れるようになったんだから助けてあげるからさ]
[結構です]
[そう言わずに!]

押し問答の結果、私は翔と名乗る幽霊をそのままにすることにした。
――それから実際、やり取りをしていると助かったことがいくつもあった。
テレビを見ていて洗濯の出来上がり音に気づかなかった時も教えてくれたし、お風呂に入るのに収納ケースからタオルを取り忘れたら教えてくれた。
留守中に家に誰か来たら教えてくれるし、なんだかアシスタントを持ったみたいだった。
ただ時折、買っておいたパンがなくなるとかあったけど翔は[幽霊も食べなきゃやってられないこともある]と言われた。

そうして数ヶ月過ごしたが、それは突然訪れた。
独り暮らしの私を心配して訪ねてきた両親。私は留守にしていたので合鍵使って入ってもらったのだが、父から
[不審な男がお前の部屋にいる]とメッセージが送られてきた。
急いで帰ると、無精髭を生やし髪がボサボサの男が警察に連れて行かれるところだった。
一瞬目があった気がしたが、既にパトカーの中。
警察官から話をされるのを聞きながら、ゾッとした。

翔からのLINEはそれ以来ない。




創作 2023/09/15

9/15/2023, 2:57:23 PM