正直、もう諦めたかった。
何十年も戦い続けて、それでも終わりは見えなくて⋯⋯少しずつ人類は滅びへと歩を進めている。
その現実から逃げたくて、何度もそう思っていた。
私達が戦っているのは深淵の獣と呼ばれる怪物。
それは突然地下からやって来て、1ヶ月もしない内に大陸の国々を蹂躙していった。
残った国は元々軍事力の高い国ばかりで、生き残った人々はそういった国に逃げ込み難民として生活している。
かく言う私は島国に生まれたのが功を奏して、激戦と言われる大陸程の戦闘は無いものの⋯⋯それでも1日で何十人もの死者を出しながら、自国の防衛にあたっていた。
幸い、何故か深淵の獣たちは日の昇っている時は地上に出てくることは無かった為、太陽が昇っている今だけは、皆平穏に過ごせている。それでも、警戒するに越したことは無いから⋯⋯こうして交代しながら奴らの出入り口を見張っているのだけれど。
後少しで交代の時間に差し掛かる時だった。
今日の日報を書いている最中―――ドンっと鈍い音が聞こえ、私は急いでその音がした方へと視線を向ける。
間隔を開けて鈍い音が聞こえていたその方向は奴らの出入り口からで、私は急いで警報を鳴らして緊急放送で場所を伝える。その間にも鈍い音は間隔を狭めて鳴っており、遂には塞いでいた鉄の扉が凹んだ。
私も急いで準備を整え、戦闘態勢に入る。
それから少しして鉄の扉は破られて、見たことのない獣が姿を現した。
一緒に見張りをしていた私の部隊のみでの戦闘。だが、発砲するも弾が弾かれてしまい距離を詰められる。何とか獣からの攻撃を避けつつ刀で斬りつけるが、皮膚が異常に硬かった。
私は急いで全体通信を使ってこの個体について、今分かっている情報を共有しこの皮膚を貫通出来る武器を用意するように促す。
彼等が来るまで、何とかここを死守しなければならない。
死んでも守ると言いたいところだが、一々死んでたら守るものも守れないので、比較的柔らかそうな場所を狙って狙撃と斬撃を繰り返しながら、相手の攻撃をもらわないように紙一重で躱していく。
そうしている内に、仲間が放ったスナイパーの弾が目に当たり獣が一匹絶命する。
それを皮切りに、私達前衛組が囮になり後衛組は眼窩を狙って狙撃する作戦に切り替えた。
だが、後から後から出てくるため、キリがなく⋯⋯私達も疲弊して躱すのも厳しくなってきている。
フラフラになりながらも、増援が来るのを待ちながら戦い続けていたが、最後の最後で一撃もらって吹き飛んだ。
大木に物凄い勢いで当たり、背中を中心に激痛が走った。視界はノイズが走る様に安定せず、時折火花のようなモノまで見える。
―――ここまでか。
そう思った時だった。
数多の銃声が聞こえて、怒号のような叫びと共に沢山の音が聞こえた。
その辺りで私は意識を保つのも億劫なほどの眠気に襲われ、そのまま意識を手放した。
◇ ◇ ◇
『あーあ、またお気に入りの子が死んじゃった』
大きな独り言と共にため息を吐く。
なんであの子はいつも無理するのかしら? ママ泣いちゃうわよ?
なんて思いながら箱庭に手を入れて死んでしまったあの子を取り出す。
箱から出た途端に、私と同じくらいまで大きくなったあの子を直ぐ様魔法で綺麗にして、血液だけ採取し塵に還した。
その後いつも通りに箱庭の中身をぐちゃぐちゃにかき混ぜて壊して、全部死に絶えたのを確認してから魔法で火を放ち更地にする。
それから新しい土を入れて魔法で草木を生やし、海も作ってまた新しく作ったお気に入りのあの子をその中に入れて、適当に作った番も放り込む。
私は2人が起きるのを待ち侘びながら、お気に入りのハーブティーを入れて一服する。
今度はどんな世界が出来上がるのかしら?
そんな期待に胸を膨らませながら、私は今日も―――自分の作り上げた魔法の箱庭の世界に没頭するのだった。
2/23/2025, 1:56:25 PM