真夜中まで、起きていた日は特別な感じがした。
誰も起きていない。誰も僕の邪魔はできない。ベットから抜け出して、ベランダに出る。
「きれいな空」言葉が口からこぼれ出てくる。
「そうですね」思わぬ返事に声のした方向へ、顔を向ける。
声の主は隣の家にあるベランダからだった。
若い女の人、年は二十代だろうか、、、
「こんばんは。今日は月が綺麗ですね」
一瞬恋文かと考えたが、初対面だし感想を伝えてくれただけだろう。
「そ、そうですね。」
親を起こさないように、小さな声で返事をする。
「もしかして、親御さんはもう寝てる?」
僕と同じ小さな声で聞かれた。
こっくりと、頷いた。
「そっかー。さあ、夜更かし少年よ。もう寝なさい。明日もこの時間に起きて、夜空を見ればいい。睡眠不足だと、勉強に集中できないぞ~」
注意されて、自覚する。
この時間は子供が起きてていい時間ではない。
「でも!」
大きな声を出した。親が起きた気がする。
急いで、ベランダから出て布団に潜り込む。親は結局部屋に入っててこなかった。
いつの間にか寝てしまい、気づけば朝日が差し込んでいた。
昨日の、ことはもう頭にはなく、リビングで朝御飯を食べる。
「おはよう慶太。」
「おはよう、お母さん」
「慶太郎!あと十分で家でないと学校遅刻するよ!」
「わわわ、分かったよ!!」
急いで家を出て、隣の家を見る。ベランダには昨日会ったお姉さんが手を振っていた。
振り返す暇もなく、会釈だけして走る。
会釈したあと、お姉さんはいなくなっていた。
5/17/2024, 10:06:40 AM