子猫#10
「私たちもう別れようよ」
私はそれだけ送信してスマホの明かりを消した。
真っ暗で曇った空にため息をついた。
星なんてなかった。
もう今年もラストスパートで、私の香水もラストノート。
クリスマスを前にして別れを告げた。
空は黒くて息は白い。私は待ち続けたあの人が来るのをずっと前からこの寒空の下で。
でもあの人は一向に現れなかった。
約束なんてなかったみたいに平然としているのかな。
私は分かっていた。あの人は他にも会っている人がいることくらい知ってた。
だって私と会う時はいつだって他の女の匂いがしたから。
別れようなんて今更かもね。
私はいらない子。
あの人猫好きだって言ってたな。
私が子猫にでもなったらまた愛をくれるのかな。
霜のように冷たい手と、あなたの心。
さようなら。
11/16/2023, 9:51:10 AM