→短編・良い子も悪い子も真似しないでね。
〜行列の二人・3〜
「本当にスリルに満ちてたよなぁ」と落ち着いた声が、感慨を滲ませて呟いた。
仕事帰り、夕食をファーストフードで済ませようと列に注文の列に並んでいた私は、よく響く声に誘われて声の主を探した。
……。
なんだろう? どういう巡り合わせなんだろう?
一度目はおばんざいビュッフェ、二度目は美術館。そして三度目の今日。
こんなに同じ行列に並ぶ確率ってある?
私の隣の列に並ぶのは、これで三度目の遭遇となる高校生二人組だった。声の説得力と内容が伴わない子と、冷静な子。
先の発言は内容が伴わない子。
もうこうなってくると二人に役を与えたくなる。もちろん……。
「いきなりどうしたよ」
「さっき家を出る前に賞味期限1週間切れのヨーグルトの大っきいパックを母親が見つけてさ」
手でそのサイズを表している。サイズ感からして400グラムのやつか。
あ~、と相槌とも共感ともとれる声が上がる。うん、わかる、難しいラインだよね。
「母親が食うって言うから、奪って全食いしてきた。スリリングな気持ちを今も抱えてる」
「やらかしたな」と、呆れたような声。
賞味期限云々関係なく、普通にヨーグルト400グラムの一気食いは色々と危険だよねぇ。
「だってさぁ、腹痛くなるんなら親よりも自分のほうがマシかなぁって」
……。
「……」
い、いい子じゃないか!!
「お前のそういう所、普通に感心するわ」
そして妙に素直な感想! たまらんな、この二人!
「うっわ、褒められた! 俺、ここの支払いタカられる!?」
「―んで、自分で墓穴掘るよな。奢ってくれんの?」
「ムリっす! さぁせん!」
うん、命名、ボケとツッコミ、コンビ名、ザ・行列。
テーマ; スリル
〜行列の二人〜
・10/26 一人飯(テーマ; 友達)
・11/1 展覧会(テーマ; 理想郷)
11/13/2024, 2:46:40 AM