へるめす

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皓々たる月も、上り初めよりいよいよ高く光り輝く頃、上機嫌に揺れる小さな白布が一人歩いている。

夜餐の最中、何か思い出したように箸を止めると、女は押し入れから大きな白い布を引っ張り出して来て言った。
「いけない、今日から実習の授業があるんだった」布を広げると、それをすっぽり被って子の方を向いた。「いい?お化けはこれよ。もし人間がいたら、こう」
言いながら、女は布の中で両手を揺すって見せた。
「じゃあ、おれはもう行くぞ」玄関の方から、男の声がしたかと思うと、大きな翼が羽ばたくような音がする。
「あ、もうこんな時間」女は布を被ったまま、子がとっくに済ましていた食器を片付け始める。「宿題はちゃんとやったのね」
もちろん――子は元気に答えると、母親から布を受け取る。それから仕度を終え、玄関で布を被り、快活な足取りで――いや、足はないか――とにかく家を出たのである。

そう、真夜中は、お化け達にとっては一日の始まりの時間なのだ――な~んて話があったとしたらどう?
「どうもこうもあるか!バカヤロー!」わたしは目の前の白い布を勢いよく引っ張った。「こんな夜中に呼び出して何をやっとるんじゃ」
「あぁ、ごめんって」彼女は身を竦めながらも、堪えきれず笑った。「そんなにびっくりするとは思ってなくて。あ痛っ」
そんな風に真夜中の公園で揉み合っている時だった。
園外の外を、ふわふわと楽しげに移動する白い影を、確かに見たのは。

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真夜中

5/17/2023, 1:42:46 PM