海老body

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誰がために、我はいるのか。

他人の指標でしか自分の価値をはかれない私の、生きるにあたって1番大事な論点だ。

誰がために。誰のために。
私の存在理由は?
誰がために、それは運命の人、と呼ぶものだろうか。

そうぼんやり考えながら、今日も通学路をぽとぽと歩く。
「あっ!」
少し先から驚嘆の声が。思わずそちらを見やる。すると、私の高校のすぐ目の前にある高校の制服が。
何かを探している…様子。
ああ、大変ね、と足を踏み出そうとした時、ふと地面に小綺麗なハンカチが。
あ、これは、もしかして、もしかするのだろうか。
ドカンドカンと聞いたことのない音色を心臓が奏でだす。
震えだした腕をなんとか抑えながら、そっとそのハンカチを拾い、目の前で未だにわたわたと何かをがしている様子のその子に声をかける。
夏の終わり、汗の香りがふわりとした。
「あ、あの…落とし、まし、た……?」
顔は見れなかった。
ただただ、私の手の中の、くしゃくしゃになったハンカチを見つめていた。


『コイビト』

10/8/2024, 12:21:41 AM