「1つだけ、俺のものをあげるならなにがほしい?」
「そうだな……カバンに隠し持っているファンタかな」
彼は固まって、そそくさと離れていった。俺は適当な本を読んでいて、ファンタを取られないようにする彼をにやにやと眺めていた。
「なんで知ってるんだ!」
「さあ」
誤魔化すと、彼は悔しそうな顔をした。ふくれっ面で俺に近寄ってきて、ぺしぺしと頭を叩いてくる。俺の貴重な脳細胞が死んでいくのでやめてほしいのだが、彼はお構い無しだ。
「じゃあ、俺のものも1つだけなにかやるよ。なにがほしい?」
そう聞くと、彼はきょとんとした。豆鉄砲を食らった鳩のような顔をして愛らしい。
たっぷりと考えた後、彼は答える。
「君がほしい」
そんなもの、とっくに君のものだというのに?ジュースを隠し持っているくせに、どうにも無欲で困ってしまう。
4/3/2024, 11:48:07 AM