【ティーカップ】
最後の一滴まで紅茶を注ぐと
波紋が広がった
波紋は器のフチに触れて消えるはずが
それを飛び越えて部屋全体に広がっていった
とたんに辺りは波がさざめく
波に飲み込まれそうだ
波の間に何かが見える
白い、そう白いウサギだ
長い耳が波の間にぴょこぴょこみえる
手を伸ばし捕まえようとしたその時
巨大な鮫がウサギを捕えて皮を剥いだ
あかべっそうになったウサギは波打ち際で泣いている
通りがかりの神様は、塩水で洗うといいと助言をする
その通りにすると傷に塩水がしみてウサギは更に泣いている
かわいそうなウサギに、がまの穂がいいと言いたくて
「がまの穂」といったところで我に返った
テーブルには暖かな紅茶があり、茶菓子があり、
自分の部屋でくつろいでいたのだった
夢なのかと思い、ふとテーブルを見る
ウサギの形をした飾り砂糖があった
しばらくそれを見つめてぼんやりとした後、
テースプーンにウサギをのせて紅茶の海に浸した
11/11/2025, 2:10:03 PM