いす

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馬鹿だね。絵に描いて、うたを詠って、字を綴って、たくさんたくさん繰り返してそれらの想い出を遺そうとしている君が泣いている。「出逢い直すしかないの。新たな出逢いでしかないないの。思い出すごとにすべては変節して、変容して、ただしく思い出せない。古い記憶に新しく出逢い直してる。時間は刻々と流れる。私は1秒1秒変わる。あのときの私じゃない。同じ想い出であることは叶わない。これらはすべて想い出になり損ないの骸。もうやめたい、もうやめたいのに、どうしてこの手は止まらないの。どうしてこの口はうたうの」あの想い出たちはちゃんときみのなかで息づいていて、あるいは死んでいて、それでも君に愛されている。変わっていくことそのものが記憶のかたちなら、かなしむことじゃない。もちろんかなしんでもいいけど。君はたくさんの遺言を書き遺している。私の想い出も変わり続ける。もういない君に私は出逢い続ける。

11/18/2023, 3:34:05 PM