かのこ

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『嵐が来ようとも』2023.07.29


 〽︎嵐が来ようとも、怖くないわ
 この物語の主人公が歌い上げる。その歌は数奇な運命を辿った皇后の切なる願いだ。
 束縛を嫌い、自由に生きたいと言う彼女の物語は、こうして後世で語り継がれている。
 オレが演じるのは、そんな彼女の命を奪う男である。時にはストーリーテラーとして、時には雑踏の一人として。彼女の人生を共に歩み、そして老年となった彼女の命を奪う。
 そんな男も、彼女を語る上では無くてはならない存在である。
 オレはこんな役を演じるのが好きだ。主演を演じるのも好きではあるが、主演の影でキラッと光る二番手を演じることは、たまらなく気持ちいい。
 今思うと、これまで演じてきた役は、ひとくせもふたくせもある役ばかりだった。多少の嵐ならなんとも思っていないような。
 主人公とその夫が歌い終わるとオレの出番だ。
 からかいまじりに、新婚の二人を皮肉りながら物語を先に進める。それに合わせて、もう一人の主人公がやってくる。
 皇后の運命に無くてはならない存在。
 それこそ、彼女の運命に嵐を巻き起こし、番狂わせを引き起こす存在なのだ。
 果たして、本当に怖くないと言えるのか。
 答えは彼女の運命が教えてくれる。

7/29/2023, 12:28:09 PM