浜辺 渚

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僕にはお気に入りの崖があった。家から自転車で30分ほどする所に密林があり、そこの小径を10分ほど歩いていくと、海を一望できる開けた崖にでれた。それは海という手をつけられない程巨大な力を町から守っているみたいに、海と町とを力強く隔てていた。
僕は近くにある小さな展望台から、自前の双眼鏡で海の向こう側を見るのが好きだった。レンズ越しの世界では海と空の2つの単一的な概念のみで成り立っていて、そこは、僕の居る複雑で無駄な世界とは全く違うものだった。

2/8/2025, 5:04:42 PM