紺色

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「ねえ、あのさ、すっごいこと聞いていい?」

久しぶりに友人に会った日。

家に招いて、一緒にお菓子を食べていると、すごく真剣な顔で友人が聞いてきた。

「どうぞ?」

お菓子を頬張りながら、目配せをする。

「もしさ、過去に行けたら、どうする?」

汚れた指先を舐める。

麦茶で口の中をリセットした。

「それさ、思ってるよりベタじゃない?」

「えっ?そう?結構凄いことじゃない?」

新しい、小さめのお菓子に手を伸ばした。

「いやいや、普通の質問だよ?じゃあ、どのくらいまで戻れるの?」

「んー、自分が生まれた時?赤ちゃんの時?までかな?」

「なんで疑問形なの」

「いや、そんな質問されたの始めて」

「へぇー……」

口の中に数個放り込む。

甘いのが口に広がって考えることができない。

「因みに、さつきだったらどうする?」

さつき、と言うのは友人の名前。

「えー?どうだろ、あ、勉強を頑張るように言うとか?」

「…ん?ちょっとまって、どういうこと?過去の自分に言ってくるってこと?」

「そうだよ?」

再び麦茶を飲む。

「ん??ねぇ、この質問結構曖昧じゃない?」

「どこが?」

「いや、私はね?やり直せるならどうするか?ってふうにとってたのよ、この質問を」

「……うん」

「でも、さつきの場合は、大人のまま過去に戻って、過去の自分にあってくるって意味じゃない?」

「そうだね」

「でしょ?」

「いやでもさ、やり直せるならどうするかって聞いてるなら“もしも過去に行けたら”とは言わなくない?そのまま聞くくない?」

「あ、そっか。そうか、ごめん」

麦茶を口に流し込む。

「いや別に、じゃあ改めて聞くけど、過去の自分に会えるとしたらどうする?」

「今の自分の状況を教えて、こうなるから頑張れって言う」

「ねぇ、あのさ、本当にこんなこと言っちゃ駄目なんだけどさ」

「………じゃあ言うなよ」

ポテチを取って、口に入れた。

「あのさ?……言っていい?」

「どうぞ?」

「ななってさ、そんな事教えられても変わらなくない?」

なな、と言うのは私の名前。

「それはそう、でも!じゃあ言わせてもらうけど、さつきだって、人に言われただけじゃ勉強しないでしょ」

「しないねぇ、まぁ、私たちは何言っても変わらないよねぇ」

さつきが麦茶を飲む。

「まぁ、今が一番じゃない?変になんか変わって私たちが友達じゃなくなったら嫌でしょ」

「まぁね」

お菓子はほとんど、さつきに食べられていた。



                          もしも過去へと行けるなら

読んでくださりありがとうございました。

7/25/2025, 6:11:22 AM