白井墓守

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『好きじゃないのに』

好きじゃないのに、嫌いになれない。
……ピーマンの事だ。

○○○

今、私の目の前にはピーマンの乗った皿がある。

今、私はめちゃくちゃ顔を顰めているだろう。

「ほら、食えよピーマン。好きだろ」
「馬鹿を言うなよ。この世で一番ピーマンを食べたくない人間が私だぞ」

私が人を殺せそうな目付きで唸りながら、ピーマンを出してきた友人を睨みつける。
すると、友人が不思議そうな顔で小首を傾げた。

「へぇ。俺はお前がピーマン好きだと思ってたよ、じゃあお前はピーマンが嫌いなのか?」
「……嫌いになれたら良かった」
「なんだそりゃ」

ふいっと視線を逸らす私に対して、ケラケラと友人は笑い出す。そして、いともたやすく私の目の前に置いてあったピーマンを口にした。

「う~ん。やっぱり、お前が作ったピーマンが一番美味いな。なんで、ピーマン好きじゃないのに、ピーマンの世話なんてしてんだ? 俺はピーマンが好きだから、美味いピーマンが食えて嬉しいけどよ」

「……それは」
「それは?」

ジッと見つめられ、私はお手上げだと言うように、ぼそりと本心を口にした。

「私が、この世で一番好きな人間がピーマン好きだからだよ」

そう言った私の視線は、きょとんとした顔の目の前の男に向いていた。

……本当、嫌いになれならどれだけ楽だったろうか。


おわり

3/26/2026, 3:40:00 AM