愛を叫ぶ。
ここは、「愛」を金銭で取り引きする、なんとも摩訶不思議な世だ。
「さあさあ、ここにあるのは「家族愛」さ! 心をほっこりさせてくれるよ~!」
「「恋人の愛」はいらんかねー!」
そんな世にひとり。「無償の愛」を求める男がいた。
しかしこの世は哀しいかな。
「愛」は取り引きするもの。「無償」とは縁遠いものだ。
「だれか……誰でもいいから、愛をくれー!!」
「そんなにほしいなら、あげようか?」
そう答えたのは、一人の子供だった。
いきなりの登場と、これまたいきなりの発言に、男は戸惑いを隠せない。
「…………」
「ちょっと! 誰でもいいんじゃなかったの!?」
口は災いの元、とはよく言ったものだ。
それが、ふたりの出会いだった。
まさか、そんなふたりが。そこまで年の差のあるふたりが。
本当に「無償の愛」を得る事が出来ると、誰が予想できただろうか?
5/11/2023, 11:49:55 PM