とと

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空からアイスクリームが降ってきた。
見事に頭のてっぺんに直撃したそれが溶けて額へ、口の中へとつたってくる。
甘い、バニラ味。
頭がじんと冷たい。
ハンカチを取り出してできるだけ拭ってみようとする。
どこから落ちてきたのかと見上げても高い建物もなくただ虚しいほどの雲ひとつない青空が広がっている。
夢、だろうか。
でも口の中は甘くて、頭は冷たくて、ハンカチはベタベタだ。
すると突然、
「お姉ちゃん、踊ろ!!」
小さな女の子の声と共に右手をぐいと掴まれた。
女の子は手を掴んだまま私の周りをぐるぐると走っている。
視界がぐるぐると回る、回る。
そういえば、
そういえばアイスを食べたのはずいぶん久しぶりだった。
女の子は楽しそうに走り続けている。
自然と笑顔がこぼれた。
何もかも嘘みたいだ。
アイスも、青空も、女の子も、私も
でもなぜか楽しい、私の足もつられて動く
すべてが撹拌されて 溶けあっていく
まだまだ まわる まわる



『踊るように』

9/8/2024, 5:30:43 AM