REINA

Open App

子供の頃は



子供の頃は、いつか私も誰かと幸せに結婚をするもんだと思っていた。

でも、気が付いたら女性としての旬は終わっていた。
友達から来る結婚式の招待状を、何通ももらっていた時から、もう少し自分の心配をしていれば良かったのに、私に取っては「仕事」が第一優先になってしまっていた。

そして恋愛をする気力があるほど若くもなく、ただ面倒と切り捨て、忙しない日々が過ぎていき、ある日過労で倒れた。


走り続けてきた自分は、そこで仕事に対する気力も失った。
今は少し休業中だ。





泥沼に浸かっているかのような気怠さ。
カーテンの隙間から差し込む朝日の輝きが、今の私の心持ちと正反対で、枕に顔を突っ伏した。

何とか起きて朝ご飯だけでも食べようと、義務のような感じで足を出す。

コンビニやスーパーのできあいもので済ませていた私は、料理もまともに作れないと改めて女子力のなさを感じた。


と、携帯が鳴った。
鳴ったと言っても一瞬なので、LINEの知らせだ。
どうせ、フォローしているサイトのお知らせだろうと思いつつも、つい仕事の癖で確認をする。

「……あ、」

思いがけない相手は、自分の担当するタレントからだった。
何かあったのかと思い、LINEを開く。

「大丈夫ですか?ちゃんと朝ごはん食べてくださいね!仕事、行ってきます!!」

まさかタレントを心配させてしまうとは、マネージャー失格だなと思いながら

「ありがとう。仕事頑張って!」

と端的にLINEを打つ。
そうするとすぐに既読がついた。

早っ!と思いつつも、次に送られてくる愛くるしいスタンプに笑ってしまう。

私には愛する人も、子供もいないが、守るべきタレントがいる。

私はこれからも彼らの盾となり、有名になるよう育てる責務がある。

これも「愛」と呼ぶのだろう。

タレントに取ってはありがた迷惑かもしれないけれど。

6/23/2024, 12:15:20 PM