→短編・彼女と喧嘩した。
彼女と喧嘩した。
彼女とは半同棲で、お互いのマンションを行ったり来たりしている。
昨日の晩、彼女のマンションから帰宅しようとした際に、彼女がいきなり泣き出した。彼女の気持ちに反して、僕が帰宅してしまうことが度々あり、それが辛いと言うのだ。
突然のことで面食らった僕は、自分はエスパーではないから心は読めないので、泊まってほしいなら言ってよと、口答えしてしまった。心の中で「行かないで」と願われても、どうしようもないじゃないか。
でも、言うべきじゃなかった。大ゲンカになった。言わなくても分かってほしいと言うのが彼女の言い分で、さらに僕には『察し』が足りないと怒られた。
そのまま彼女との仲は修正できていない。
翌日、オフィスのランチタイムに、思わず同僚に愚痴ってしまった。同期入社の彼女は、やれやれと息を吐き出した。
「彼女はあなたに『察して』ほしいのではなくて、もっと寄り添ってほしいんじゃない?」
「ほとんど同じじゃん。適当に流そうとしてる?」
「バレたか」
同僚はそう言って、「カップルのケンカ話ほど、つまらんものはないもん」と笑った。
まぁ、そうだよな。それに、同僚のアドバイスは適当ながらも、思い当たるフシがある。
よくよく考えると、何度も帰宅するときになって、いきなり帰ったりしてたもんな。彼女が僕の部屋に来たときは、ちゃんと予定を前もって伝えてくれていたりしたのに。
僕はスマートフォンを取り出し、彼女にメッセージを送った。
―今日、そっちに行っても良い? 話がしたい。できれば泊まりたいな。
テーマ; 行かないでと、願ったのに
11/3/2025, 2:49:45 PM