夏の匂い
果てのない大海原を思わせる、空一面へ広がる灰色の雲を天井に。地面一帯へ向かって降り注ぐ、水晶のようにきらめきながら、植物に恵みを与えるじょうろの役割を果たす雨粒と、多くの足で踏みしめられたであろう土が混ざり合った、私が好きな雨の匂い。私のお気に入りは梅雨の時期。雨の匂いが、揺らぐ波みたいに漂って顕著になる、唯一の期間だから。
雨の匂いが梅雨明けと共に去った日、私は夏の訪れを告げる、新緑の匂いを意識し始めた。雨とは違う独特な、でもどこか爽やかな緑の匂い。季節の、景色の移り変わりを伝え、匂いを感じる楽しみが増えたような気がした。
7/1/2025, 1:52:51 PM