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『ここでないどこか』


しんどい、辛い、苦しい、

胸の内から汲み上げる感情が溢れ出し、
今朝の朝食だったものと共に胃から逆流する
誰も居ないトイレの個室で浅い呼吸の音だけが木霊している

胃の中が空っぽになったって、
この感情も一緒に無くなる事など有り得る筈もなく、
僅かな解放感の後に、また不愉快な悪感情が心身を蝕む

口内に広がる僅かな酸の匂いと、えぐみを伴う酸味に
また胃から何かが込み上げてくるのを感じて、
それ追い出すようにしてまた便器にしがみつくようにして、
胃から戻って来たものを吐き出した


出すだけ出して、やっと立ち上がれるようになる頃には
身体中から汗が吹き出し、意識が朦朧とし始めていた
個室を後にし、手洗い場で手と口を濯ぐ

腕時計が示す時刻はとっくに一限目の授業時刻を過ぎており、
廊下は閑散としていた

いつからこうなったのか、そんな事もう思い出せもしない
ただ、昔は普通の生活を送れていたはずなのに
それがもう貴重な体験だったかのようにすら感じてしまう

行き場を失った者は何処へ向かうべきなのか
辿り着く場所は分からないけれど、
たった一つ確かな事、
それはきっと『此処では無い何処』であるという事だ

6/27/2023, 12:50:03 PM