空はこんなにも
私は精神を崩すと視界に影響が出ることが多い。
症状は特に決まっておらず、視野が極端に狭くなったり、色が見づらくなったり、光や遠近感の調節が出来なくなったりと様々だ。
私の19年の人生の中で最も精神を病んでいた17才の年は、視界もぐちゃぐちゃだった。
初回の授業で白髪のおじいちゃん先生だと思っていた先生が40代の黒髪の先生だった。
隣の席の子に先週と先生変わった?と聞くと怪訝な顔をされた。
歩いている時に、階段がとてもとても長く高いものに見えた。
上りきれないような気がして、よく途中で座り込んでいた。
突然自分の身長が高くなったかのように錯覚することもあった。
母に聞くと、そんな一日二日で伸びてたまりますか、と返された。
ほとんど常に見える景色はセピア色で、極稀に強烈なコントラストを最大にしたような白黒映像に見えた。
自分の人生を続けることを選んだ日の夜、私は空を見上げた。
普段は空を見上げることなんかなかった。
昼も夜もただ眩しいだけで、何もないはずだった。
でも、その日は違った。
まぶしくてたまらなかったはずの月が、優しく暗闇を照らしていた。
見えなかったはずの星が静かに輝いていた。
ただ黒くて狭かっただけのはずの空はどこまでもどこまでも、広かった。
ああ、空はこんなにも
6/24/2025, 1:31:11 PM