【視線の先には】
真っ直ぐに、前だけを見ている、その人を私はただ見る。
倒すべき敵を見据えて、他の事は些末な事と切り捨てて、だから私がいてもこちらを見ることはない。
自分の幸せも願望も、全て無いようなふりをしているから。
「何、考えているんですか?良かったら話してみて下さい」
顔を覗き込んでそう聞いてみる。でも、
「お前には関係ない」
(それはそうでしょうけど)
あまりにあっさりとそう言われるから、
「流石にそれは、寂しいですよ」
そう言うと、やっとこちらを向いてくれる。
(やっと視線の中に入れた)
微笑むと、また視線を逸らす。
(この人の視線の先には、私はいない)
それを知るのが怖いから、何度でも、話しかけるのだ。顔を覗くのだ。
どうか、いつか、死ぬ前でも良いから、この人の視線が、私に向いてくれるよう願って。
7/20/2024, 2:06:30 AM