吉行へ
君のことだから、きっと上手くやれているはずだ。
君に出会う前の朧気な記憶を、思い出すことができた。そう、全てだ。私は古き人類として、同胞たちと滅びゆく文明をどうにかして存続させようとしていた。人類が歴史を後世に残すように、滅びの後でやり直せることを信じて、私は長き眠りについた。
しかし、この試みはうまく行かなかった。大地は新たな名で呼ばれ、動物の特徴を併せ持つヒトが異なる文明を創り上げていた。
旧き同胞たちか、今を生きる仲間たちか。
私の選択が正しいのかはわからない。
実現のために、途方もなく長い時間と数えきれないほどの犠牲を費やしてきた。
今更引き返すなんて、できるだろうか?
悲しいことに、孤独に効く特効薬は存在し得ない。しかし、君は瀕死の私を守り抜き、私の選択を尊重すると話してくれたね。
今の私は君たち男士の主だ。
罪と向き合い、君たちのために1日でも長く生きてみせるさ。
最後になったが、君の帰りを楽しみにしているよ。
本丸で会おう。
『修行中の主からの手紙 3通目』
4/23/2024, 8:06:10 AM