Saco

Open App

夜の海

暗い空と同じ色をしてそこに佇む
広い海 闇色に染まる空と黒色の液体の様に大きく唸る波が周囲を飲み込む
波打ちぎわに足を浸ければ冷たい水温が
肌を刺す様に冷たい

心の奥底に眠っている翳りが冷たい水温に
浸かる事で頭の中に蘇って来る
何がいけなかったのだろうか
自分自身を省みても 何が原因だったのか
心当たりが思い付かない
嫌 きっと 私とあの人のボタンが少しずつ掛け違っていったのだろう
少しの価値観のズレをそのままにし流し
気付かない振りをして幸せな家庭円満な
夫婦だと思い込んで 私は、幸せだと
恵まれているのだと刷り込む様に自分の
脳に言い聞かせていたのかもしれない

嗚呼 何故あの人は、あの女の元に
行ってしまったのか 私は、あの人に
尽くして 尽くして 尽くしたのに
やはり、若さか 美人で若い女に男は
食いつくのか けれど私だって独身時代は
自分を磨いて 化粧も美容も念入りに
丁寧にやってきたのに さぼって
居たわけじゃない 唯私は、あの人に
快適に過ごして欲しくて 暖かい家庭を
あの人に少しでも感じて欲しくて

仕事や家事で荒れてしまった手や肌を
顧みず 私は、身を粉にして、働いて
家事もして あの人も仕事を頑張ってるん
だから私も少しでも支えようとして  
頑張って 頑張って でもそれが家庭で
すれ違いを生んで そうして気付いた頃には あの人に裏切られ 傷付けられ
そしてあの人は、私の元を去って行った....

(あはははっ笑える!)私は、意味も無く
笑いが込み上げてきた

そうして私は、波打ちぎわに浸かって
いる足を進ませ深く 深く体を浸からせた
私の死体が見つかるかは分からない
だけど私は、もう生きるのが辛い
死にたい訳じゃないだけどもう疲れた
何もかもなくなりあの人も私の元から
居無くなった今何を糧に生きていけば良い
せめて子供でもいればまた違ったのだろうか お互い仕事 仕事でそんな甘い一時は、最初の内だけだった。

でも真面目に働いていたのは私だけだった
みたい.....
嗚呼早く楽になりたい私の下半身はもう
暗い海に浸かっている。
このまま暗い海の底に体を沈めて
いけば深海と言う綺麗な場所に
行けるのだろう そうして私は、海の一部になる。綺麗に真っさらにリセットされる
その姿を思い浮かべ私は、笑みを深くする

こうして 私の体は、海の底に消えていき
波間に溶けて行く まるで泡になって
消えた人魚姫の様に 私の体はリセットされ穢れが浄化される様に暗い海が 夜の海が私を包み込んで行く

8/15/2024, 11:44:39 AM