シュテュンプケ

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 満点の星空。月も明るい。懐中電灯も必要ない気がしてくる良い夜だ。今にも流星群が降りそうな。

 山の中の空は、木々がフレームになって絵画のようにも見える。

 こういう日はこういうことをするには不向きだった。

 まだ涼しい季節なのにわたしたちは二人揃って汗だくだった。お互いに肩で息をする。

 顔を見合わせて、わたしは笑った。あなたはつられたようにぎこちなく唇の端を持ちあげた。

 今しがた掘った穴は、その内側にひとを飲みこんで閉じられていた。掘り返した土の様子が露わになっている。落ち葉とか小枝とか、手当たり次第にかき集めてぶちまける。これで違和感も少しはマシになるだろうか。

 シャベルの持ち手を握りしめ、歯をがたがたと鳴らしてあなたはわたしを見つめた。無意識に手をズボンへ擦りつける。もう付いていない赤色をなするように。

 頼れるのはお前だけ。服も手も真っ赤に染め、それとは正反対に青を通り越して白い顔のあなたが数時間前に言ってくれたことを反芻し、わたしは小さく笑い声を零した。

 訝しげに、怯えた顔をするあなたに上を指差す。星が遠くで瞬いている。

 いい夜だ。この空も、あなたがわたしを選んでくれたという意味でも。




4/5/2023, 6:34:37 PM