人生で1番自転車を漕いだ日は、ママチャリで往復40kmくらい走った。
何故そんな距離を走ったかというと、
隣の市にある綺麗な海を観に行きたかったから。
隣の市にあるその海は、昔付き合っていた人がよく行っていた場所。
海が透き通っていて、少し波があって、サーフィンなんかにもってこいの場所。
私は車の運転が苦手だから、決まって彼に運転してもらっていた。
*
自転車を1番漕いだその日は、彼と別れてすぐの頃。
彼が居なくても1人であの海まで行けるんだって証明したくて、馬鹿みたいに自転車を漕いだ。
あわよくば道中彼に会えるんじゃないかと期待して、漕いだ。
思い出を噛み締めるように、そしてかき消すように、ゆっくりと力強く漕いだ。
途中ずっと続く坂道が登れなくて、自転車を押しながら、それでも進んだ。
*
片道3時間ほどかけて、やっと辿り着いた海。
綺麗な海に癒されて、
空っぽな心にたった1つの達成感が満ちた。
寂しくて仕方なくて、でもこれからは1人で生きるのだと噛み締めた。
結局その日彼に会うことはなく、その先も会うことはなかった。
踏ん切りをつけるためには40km漕ぐくらいが、ちょうど良かった。
8/14/2023, 10:56:12 AM