お茶の子

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人生で1番自転車を漕いだ日は、ママチャリで往復40kmくらい走った。

何故そんな距離を走ったかというと、
隣の市にある綺麗な海を観に行きたかったから。

隣の市にあるその海は、昔付き合っていた人がよく行っていた場所。

海が透き通っていて、少し波があって、サーフィンなんかにもってこいの場所。

私は車の運転が苦手だから、決まって彼に運転してもらっていた。



自転車を1番漕いだその日は、彼と別れてすぐの頃。

彼が居なくても1人であの海まで行けるんだって証明したくて、馬鹿みたいに自転車を漕いだ。

あわよくば道中彼に会えるんじゃないかと期待して、漕いだ。

思い出を噛み締めるように、そしてかき消すように、ゆっくりと力強く漕いだ。

途中ずっと続く坂道が登れなくて、自転車を押しながら、それでも進んだ。


片道3時間ほどかけて、やっと辿り着いた海。

綺麗な海に癒されて、
空っぽな心にたった1つの達成感が満ちた。

寂しくて仕方なくて、でもこれからは1人で生きるのだと噛み締めた。

結局その日彼に会うことはなく、その先も会うことはなかった。



踏ん切りをつけるためには40km漕ぐくらいが、ちょうど良かった。

8/14/2023, 10:56:12 AM