燈火

Open App


【光と霧の狭間で】


高校三年生になり、進路希望調査の紙が配布された。
進学か、就職か。具体的にどこを目指すのか。
周囲の話を聞く限り、やはり進学が大半らしい。
僕はどうしようか。真っ白な紙を眺めて考える。

一般論では、考えるまでもなく進学を選ぶだろう。
この高校は普通科で、就職に強いわけではない。
それに大卒より生涯年収が低いという話もある。
高卒で就職を選ぶのは、現代ではメリットが少ない。

だけど。僕の家は進学できるほどの余裕がない。
不可能ではないものの、大きな負担をかけてしまう。
弟妹の進学も控えているのに無理はさせたくない。
そう明かすと、親は「好きに選びなさい」と言った。

「ねえ。大学行かないって聞いたけど本当?」
ある日の下校途中、仲の良い友達に声をかけられた。
「どこからそんな話を?」確かに僕は就職を選んだ。
「寂しくなるね」彼女は答えず、眉を下げて言った。

別の日、先生に呼ばれて進路指導室を訪れる。
「本当に就職するのか」もったいない、と言われた。
「お前は成績もいいし、良い大学を狙えるんだぞ」
それが善意からの意見なのか、僕にはわからない。

進学か、就職か。決めたはずなのに、また悩む。
どうして、どちらか選ばないといけないのだろう。
誰かが正しい選択を教えてくれたら楽なのに。
親も友達も先生も、誰も僕の未来を強制はしない。

選択を迫られて顔を上げると不透明な未来に気づく。
人の後ろを追いかけて、この道を進んでもいいのか。
明るい場所を目指せば、そこに道は続いているのか。
人生の岐路を前に、僕は立ちすくんでしまった。

10/19/2025, 9:58:49 AM