雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―イルミネーション―

僕の隣を歩きながら、
クリスマスイルミネーションを見ている彼女。
僕の方はと言うと、
前方、少し右のイルミネーションに
顔を向けているけれど、目はしっかりと、
僕の右にいる彼女の方を見ているから、
僕の目に映るのは、7割5分くらい、彼女だ。
残りの2割5分は、あくまでも彼女を
より映えさせるためのイルミネーション達。
あれらは優秀な背景に過ぎない。
今はイルミネーションに夢中な彼女だが、
いつ僕の視線に気づくか分からない。
こんなことを知られるのは
あまりにも恥ずかしすぎるから、と、
イルミネーションの方に目を移した。
が、3秒後くらいにはもう既に、
彼女を見ている僕には、自分でも少し呆れた。
しかも無意識に見ていたというのだから、
まあ、困ったことだ。
そんなこんなでイルミネーションを見終え、
彼女と一緒に住む家に帰宅した。
「あの雪だるまのとか可愛かったけど、
やっぱり、1番は巨大ツリーのかなー」
『あのツリー、色がどんどん変わってくから、
見てて面白かったよね
僕は―』
なんて、お互いにイルミネーションの感想を
述べ合うが、本当の感想は、
『イルミネーションに見惚れる彼女の表情が
何よりも神秘的で儚げだった』
なんて言えない。
どのイルミネーションの光よりも輝いてるとか、
僕の彼女、美しすぎる。

という、クリスマスに書いた僕の日記を
見つけてしまった彼女に、後日、
「あの…この前、クリスマスの日に
開いたままの日記帳、
リビングに置いてたでしょ?
目に入ったから、つい読んじゃったんだけど…
私のこと、あんなふうに思ってくれてたの、
知らなかった
本当に好きだって気持ちが伝わってきて、
嬉しいな、とは思った…
…でもね…私にはちょっと重くて、
居心地悪いし、しんどいの…
だから、ごめんね…別れよう」
と言われたトラウマ、
イルミネーションを目にする度に
思い出してしまう
だから…
『イルミネーションなんてクソ喰らえ』
と舌打ちをして吐き捨てた
俺の吐いた毒は、街行く誰の耳にも届くことなく、
しんしんと降り積もる雪に浄化され消えていった

12/15/2022, 1:23:19 PM